19 国内管轄事項

平成11621日 水野 恒夫

【「国内管轄事項」とは、】

(定義)(略して「国内事項」「国内問題」)

 国際法によって規制されない一国の管轄権に属し、その処理又は決定については当事国の自由に委ねられている問題。

 つまり、他の国又は国際機関といった第三者の干渉を受けることなく、一国が排他的に決定し処理できることが認められている事項。

 

(特徴)

  Eg.典型的な国内管轄事項とされる国籍や関税に関する問題なども、国際的取り決めの対象となることで、国内事項であると言うことは難しくなる。

 

(具体的事例:国際連盟において)

  1. アーランド諸島事件
  2. 1917年ソビエト革命直後のフィンランドが独立した際、ロシア帝国の支配の下ではフィンランドの一部として統治されていたアーランド諸島の帰属をめぐって惹起された問題。

      スウェーデンは、民族自決の原則に基き住民投票によってその帰属を決めるべきと主張し、フィンランドは、自国の一部であり、これに民族自決の原則を適用することは領土主権の侵害であると主張し、対立が激化した。

      連盟理事会が設けた法律家委員会は、ある問題が理事会によって取上げられたという事実は、最早その問題が国内管轄事項でなくなったことを意味するという考えを強く否定した。しかし、この問題がフィンランドの国内管轄に属するということはできないとした。

     

     

     

  3. チュニス、モロッコにおける国籍法令事件

1921年、フランスは、保護領のモロッコ及びチュニスに関する国籍法令を宣布した。同法令は、外国人であっても両親の中一人が当該地域にて生まれた者であるときは、その適用を受けることとなり、その結果、フランス国籍が附与され兵役の義務が課せられるという内容を有していた。イギリスは、このような法令を自国民にも適用されることは、条約義務に反するものであるとして、常設国際司法裁判所、又は仲裁裁判所に付託するよう申出たが、フランスは拒否した。

  常設国際司法裁判所の勧告的意見は、原則的には国内管轄に属する事項であっても条約上の義務の対象となることによってそうでなくなることを確認し、連盟理事会にこの問題に関する権限を全面的に認めた。

 

【国連と国内管轄事項】

・・・国内事項不介入の原則

 「紛争当事国ノ一国ニ於テ、紛争カ国際法上専ラ該当事国ノ管轄ニ属スル事項ニ付生シタルモノナルコトヲ主張シ、聯盟理事会之ヲ是認シタルトキハ、聯盟理事会ハ、其ノ旨ヲ報告シ、且之カ解決ニ関シ何等ノ勧告ヲモ為ササルモノトス。」

「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。」

 

(国際連盟規約と国連憲章との違い)

  1. 国内留保事項の置かれた位置
  2.  規約:紛争の平和的解決手続を定めた第15条に置かれ、連盟理事会の紛争処理機能を制約していた。

    憲章:国連の基本原則を謳った第2条に置かれ、第7章に基いて採られる強制措置を除いた国連活動全てを制約するものになっている。

  3. 規定の表現上の違い・・・曖昧なものにした。
  4. 規約:「国際法上専ら該当事国の管轄に属する事項」

       (a matter which by international law is solely within domestic jurisdiction of that party

    憲章:「本質上いずれの国の国内管轄権内にある事項」

       (matters which are essentially within the domestic jurisdiction of any state

  5. 留保事項が禁止している行動

規約:連盟理事会による勧告であるとはっきり謳われている。

憲章:「干渉する権限を国連に与えるものでない」と規定するだけで、具体的にどのような行動又は措置が「干渉」になるのか明らかにされていない。ただ、第7章に基いて採られる強制措置の適用を妨げないことが明記されている(同条項但書き)

関係国による国内事項留保の援用を容易にさせ、同条項が国連の機能遂行に重大な障碍となりかねないという危惧が持たれていた。

 

【憲章における国内管轄事項の問題点】

 加盟国の国内管轄権内にあるものと認められる事項は、たとえ、憲章の諸規定によって規制され、または加盟国がこれに関して義務付けられているものであっても、依然本質上、国内管轄事項として同条項の適用を受けると解釈されるべきなのか。

 ↓

「国際的関心事項」a matter of international concern))

 国連の存在理由とも言える平和維持、人権保護、人民の自決に直接かかわる問題はもはや当事国のみが決定できる国内管轄事項であるということは困難であり、国連による何らかの介入を免れない。

 

 

 

 

1 平和維持に関する問題

  1. スペインにおけるフランコ政権の政策
  2. 1946年、フランコ政権の政策が国際的摩擦を惹起し国際平和と安全を危うくするものであるとして、ポーランドが、安保理事会の注意を惹起し、全加盟国がフランコ政権との外交関係を断絶することを要請する内容の決議案を提出した。

      イギリスその他数カ国は、特定国の政府の形態および性格がどうであるべきかは、本質的にその国の国内管轄権に属する問題であると主張し、決議案に反対した。

      総会の決議は、本質上国内管轄権に属する事項から生じた事態といえども、それが国際平和と安全の維持に脅威となるときは、国連の介入を排除する事項でなくなるという解釈に基いているように見うけられる。

     

  3. チェコスロバキア問題
  4. インドネシア問題
  5. 南アにおけるインド原住民の処遇に関する問題
  6. モロッコ、チュニス問題
  7. ソビエト人妻問題
  8. 南アにおける人種隔離政策問題

その他に、ハンガリ動乱に対するソビエト軍の介入(1956年)、米軍によるレバノンへの介入(1958年)、コンゴ紛争など

 

2 人権保護に関する問題

  1. インド原住民の処遇に関する問題
  2. ソビエト人妻問題

  1. 東欧三国による人権侵害問題
  2. 南アにおける人種隔離政策問題

1952年第7回総会で、南アの人種政策が世界の平和に対する脅威を醸成し、憲章が謳っている人権と基本的自由の尊重に関する基本原則の重大な侵害となる危険な自体を惹起しているとして、総会がこの問題を審議するよう、13カ国が要請した。

  南ア代表は、「憲章55条で言及している目的を達成するための手段は、加盟国の排他的管轄権に委ねられており、これに対して国際的行動が採られるためには、国家の合意を必要とする」とし、国連機関がこの問題を審議する権限はないとした。

  これに対し、たとえば、オランダ代表は、国内管轄事項不干渉の原則は、経済的問題に適用されるものであって、人権尊重に関しては加盟国が国際的義務を負っていると主張した。

  総会は、南アの決議案を否決し、「すべての加盟国が人権と基本的自由の尊重を促進するために負っている憲章上の義務に合致した政策を行うよう厳粛に要請する」との決議を採択した。

  1954年代9回総会では、「人種の如何を問わず、人権と基本的自由を尊重するという加盟国の制約が謳われている憲章の崇高な原則にしたがって、南アフリカがその政策を再検討することを希望する」という旨の決議を採択した。

  さらに、1962年の総会では、南アとの外交関係の断絶、南ア商品の禁輸措置、等を加盟国に要求し、安保理事会に対し、制裁を含む適切な措置をとり、必要な場合には国連から追放することをも考慮するよう求めた決議が採択された。

 

3 非自治地域及び自決権に関する問題

  1. モロッコ・チュニジア問題
  2. キプロス問題
  3. 西イリアン問題
  4. アルジェリア問題

その他に、コンゴ紛争でのカタンガ住民の自決、フランス植民地のコモロ諸島、アメリカ自治領のプエルトリコなど

 

 

【国際裁判と国内問題】

 国内管轄事項は、国家が他国との紛争を国際裁判に付託することを約束する場合、裁判所の管轄権を制限するための留保としても用いられている。

 

 「自動的留保」:何が国内事項であるかを裁判所でなく当事国が判断するもの。裁判義務を骨抜きにする。

 

 

 

 

【参考文献】


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