国際司法裁判所の勧告的意見
平成 年 月 日 ○○ ○○
【現代の国際裁判】
:
1995年末までに60の判決(うち本案判決39)と21の勧告的意見←常設国際司法裁判所(
PCIJ:Permanent Court of InternationalJustice、1922〜1946):29件の訴訟事件と27件の勧告的意見
(ヨーロッパ共同体裁判所、ヨーロッパ人権裁判所、米州人権裁判所、
国連行政裁判所、国際海洋法裁判所、
ILO行政裁判所、OECD内部の行政裁判所、米州機構行政裁判所、世銀
Gpの行政裁判所、+国際刑事裁判所(ICC):1998年7月設立条約を採択
他に、旧ユーゴ戦争犯罪国際法廷(安保理の補助機関)、ルワンダの臨時の国際法廷
【国際司法裁判所】
(全般)
国連の一つの「主要機関」。裁判所規程は、国連憲章と「不可分一体」をなし、国連加盟国は「当然に」本規程の当事国となる。
(構成)
15人の裁判官(1931年以降維持、それ以前は11人+予備裁判官4人)ア 一定の地理的配分の下に選出……安保理と事実上一致
(現在:アジア
3、アフリカ3、ラテン・アメリカ2、東欧2、西欧その他5)イ 五大国(安保理の常任理事国)の恒常的選出(制度的保障ではない)
(当事者)
「国家のみ(only State)が、裁判所に継続する事件の当事者となることができる」(規程34条1)。×個人、法人、国際機構(→勧告的意見)(裁判管轄権)
紛争当事国の同意(consent)が、管轄権形成の基礎………同意原則(仲裁裁判を含む国際裁判の一般的原則)
:国内の民事裁判(一般的強制管轄権の存在を前提)とを区別する最大の指標
cf.東部カレリア事件(1923年、勧告的意見):「要請された問題が現実の国家間の紛争に関係するときは、その関係国の同意なしには意見を与えることはできない」(「東部カレリア原則」)
具体的には、付託協定や裁判条約の締結、選択条項の受諾
↓
この原則が、現裁判所でも有効なものとして保持されているかは疑問。結局、関係国の同意の欠如(反対)は、裁判所の権限を当然に排除するものではなく、裁判所の司法機能との両立性との兼ね合いで、裁判所の広い判断に服することになる。
(機能)
国際司法裁判所は、「国家間の訴訟事件を解決する」本来の裁判権能(判決機能)だけ出なく、国際機関の要請に基づき、法律問題について勧告的意見(advisory opinion)を与える権能を有する。
【勧告的意見】
(沿革)
英国の枢密院司法委員会や米国の若干の州の裁判所が行政部の諮問する法律問題に意見を提出する制度に起源を有する。常設国際司法裁判所の設立に際し、国際連盟規約
14条によって制度的に導入された。これは、国際司法裁判所にも基本的に踏襲された。(勧告的意見の関連規定)
国連憲章
96条、裁判所規程65条〜68条、裁判所規則102条〜109条(勧告的意見の要請権限)
・@
国連総会と安全保障理事会が持つ。・A
国連のその他の機関及び専門機関も、個別的または一般的に総会の許可を得て、要請できる(憲章96条)。現在、国連機構の22の諸機関(総会、安全保障理事会、経済社会理事会、中間委員会、国連行政裁判所判決再審請求委員会、万国郵便連合を除く15の専門機関、国連原子力機関を含む)。PCIJでは、国際連盟総会と理事会にのみ附与されていた。
(対象)=
勧告的意見を求める問題:「法律問題」(legal question)に限られる。PCIJでは、「一切の紛争または問題」(連盟規約14条)と規定。
(裁判所の自由裁量権)
裁判所は、当該問題が「法律問題」でないと判断する場合、勧告的意見を与えることを拒否する自由裁量権を持つ(司法裁判所たる地位及び国連の機関たる地位に基づく)。唯一の例:WHOが諮問した核兵器使用の合法性についての勧告的意見 (1996年)(裁判手続の準用)
裁判所は、適用可能な範囲内で裁判手続を準用し(規定68条)、国家間に現存する法律問題について勧告的意見が要請された場合、国籍裁判官に関する規定を適用する(規則102条)
(効力)
勧告的意見は、判決と異なり、一般に法的拘束力を有しない。しかし、国際的に最高の司法機関が与えた権威ある法律的見解であり、国連の活動やそれに伴う具体的措置に関する有益な法律的指針として、一般に諮問機関によって尊重された。Eg.ナミビアにおける南アフリカの不法行為についての勧告的意見
強制勧告的意見
(compulsive advisory opinion):勧告的意見に一定の法的効果を認めるもの。国際機関や国家が勧告的意見を拘束的なものとして認めることを予め同意している場合、法的拘束力を持つことになる。
たとえば、「国連の特権及び免除に関する条約」「専門機関の特権及び免除に関する条約」では、国連と加盟国、専門機関と加盟国との間で紛争が生じた場合には、勧告的意見を求め、裁判所の勧告的意見は関係当事者によって決定的なものとして受諾されなければならない、と規定している。
ILO行政裁判所規程は、国際司法裁判所の勧告的意見の拘束力を認めている。国連行政裁判所規程も、拘束力に関し明示していないが、勧告的意見の実施措置を規定し、実質的に拘束力を認めている。
【国際司法裁判所の実行】
(事件件数)
・常設国際司法裁判所→27の勧告的意見・国際司法裁判所→22件の諮問を受け、23の勧告的意見
(諮問機関)
13件は総会、1件は安全保障理事会、1件は社会経済理事会、3件は国連行政裁判所再審請求委員会、他4件はユネスコ、IMCO(国際海事機関)、WHOが諮問したもの。PCIJでは、27件全てが連盟理事会の要請.
(要請主題別の分類)
・『国際機構の手続問題・活動の範囲内の法律問題』として、
11件加盟承認(1・3)、損害賠償問題(
2)、南西アフリカ(ナミビア)(5・8・9・
13)、国連行政裁判所補償裁定(7)、ユネスコに対する苦情についての
ILO行政裁判所判決(10)、IMCO海事安全委員会構成(11)、国連経費問題(12)、
・『一般的法律問題の協議』に関するものとして、
3件ジェノサイド条約の留保(6)、核兵器使用の合法性(
21・22)平和条約解釈問題(4)、西サハラ(
15)WHOとエジプトとの協定解釈(16)、国連とアメリカの本部協定解釈(19)、
国連特権免除条約の適用可能性(
20)、南西アフリカの国際的地位、ナミビア、PCIJ
では、
<事件(意見日付、諮問機関)と意見要旨>
:南アがナミビアを保有しつづけるのは違法、直ちに統治を終了し領域の支配を解く義務がある。
:西サハラはスペイン植民地化の時、モロッコ及びモーリタリアと法的な絆を有したが、両国の領有権は立証できない。
:同条項は、人権委員会小委員会特別報告者にも適用される。
:本件諮問は、
WHOの活動の範囲外:核兵器使用は、一般的に国際法規違反だが、自衛の極限状況については判断できない。
【勧告的意見の一例】
安全保障理事会決議
276にもかかわらず南アフリカが継続してナミビアにとどまることの諸国にとっての法的効果(ナミビア事件)(請求機関、国連安全保障理事会)(1971年6月21日)(事件の概要)
1966年10月27日、国連総会決議2145は、南西アフリカの委任統治を終了させる旨宣言した。
その後、
1970年、安保理も決議276において、南アフリカ当局がナミビアに居座っていることは違法であり、したがって、南アフリカ政府がナミビアに関して取った一切の措置は違法かつ無効であると、宣言した。そして、同年、安保理は「安保理決議
276にもかかわらず、南アフリカがナミビアに居座っていることは、国々に対しいかなる法的効果を持つか」という問題を裁判所に付託した。(主文)
………本裁判所は、
(その後の動向)
南アフリカはこの意見を無視したが、本意見はナミビア問題解決に向けてのその後の安保理の行動にとって有力な指針となった。
安保理は、
1977年11月、国連憲章第7章に基づき、南アフリカへの武器輸出等を禁止する決議を採択した。また、ナミビアの独立移行プロセスを定めた決議435を採択した。約
10年後の1988年12月、ナミビアからの南アフリカ軍の撤退及びアンゴラからのキューバ軍の撤退ならびに安保理決議435の実施を主な内容とする、三国間協定(南アフリカ、アンゴラ、キューバ)が締結された。そして、ついに、
1989年11月には、安保理決議435に定められた(制憲議会)選挙が実施され、ナミビアは、1990年4月23日に独立を達成した。
【参考文献】
(北大法学論集
22巻3,4号、1971、1972年)