T84 『学問の自由と大学の自由』――ポポロ事件
最高裁昭和38年5月22日大法廷判決
(昭和31年(あ)第2973号 暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件)
(刑集17巻4号370頁、判時335号5頁)
平成11年6月23日(水) N
<事実の概要>
東京大学公認の学生団体「ポポロ劇団」が正式許可を得て松川事件を素材とする演劇発表会を開催したが、私服警官4人が入場券を買って潜入していたのを学生が発見し、3人の身柄を拘束し、警察手帳を取り上げ謝罪文を書かせた。被告人はその際暴力を加えたとして、暴力行為等処罰に関する法律に違反したとして起訴された。
なお上記の警察手帳に記されていたメモによると、上記の警察官は以前より大学構内に立ち入り、張り込み・尾行・盗聴等によって学生・教職員・学内団体等の動向・活動・思想傾向等の情報収集を行っていたことが明らかであった。
<判決の流れ>
・第一審(東京地裁 昭和29.5.11) 無罪
「警官の比較的軽微な被害を犠牲にして確保された自由権上の権利は軽視することのできない重大な意味を持つものである。この利益の大きさと憲法的秩序保全の国法上の価値の重さは、本件における被告人の暴力的行為よりその違法性を取り去るに充分なものがあると認められ、・・・(略)・・・被告人の行為は法令上正当な行為として罪にはならない」
・第二審(東京高裁 昭和31.5.8) 棄却
・上告審(最高裁 昭和38.5.22 大法廷判決) 破棄差戻
(1)憲法23条の学問の自由は、「学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由を含むものであって・・・教育ないし教授の自由は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、必ずしもこれに含まれるものではない。しかし、大学については・・・教授その他の研究者がその専門の研究の結果を教授する自由は、これを保障されると解するのを相当とする。」
(2)「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に対して認められ、・・・また、大学の施設と学生の管理についてもある程度で認められ、これらについてある程度で大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。」
(3)「大学の学問の自由と自治は・・・直接には教授その他の研究者の研究、その結果の発表、研究発表の教授の自由とこれらを保障するための自治とを意味すると解される。大学の施設と学生は、これらの自由と自治の効果として、施設が大学当局によって自主的に管理され、学生も学問の自由と施設の利用を認められるのである。
(4)「大学における学生の集会も、右の範囲において自由と自治を認められるものであって、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによって、特別の自由と自治を共有するものではない。・・・学生の集会が真に学問的な研究またはその結果発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は共有しないといわなければならない。また、その集会が学生のみのものではなく、とくに一般公衆の入場を許す場合には、むしろ公開の集会とみなされるべきであり、少なくともこれに準じるものというべきである。」
(5)「・・・本件集会は、真に学問的な研究と発表のためのものではなく、実社会の政治的社会的活動であり、かつ公開の集会又はこれに準じるものであって、大学の学問の自由と自治は、これを共有しないといわなければならない。したがって、本件の集会に警察官が立ち入ったことは、大学の学問の自由と自治を侵すものではない。」
<論点>
学問の自由と大学の自治
<私見>
本判決の主文に対しては、賛成の立場をとるが、上記の(3)で、大学の自治の主体を「教授その他の研究者」として学生をその効果としている点、昭和25年7月24日の文部事務次官通牒を考慮に入れずに(5)のように判断している点、などに対して疑問が残る。特に大がうの自治の主体に関しては、入江・奥野・山田・斎藤裁判官の補足意見を支持したい。