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T45 『神道式地鎮祭と政教分離の原則』(津地鎮祭事件)

最高裁昭和52年7月13日大法廷判決
(昭和46年(行ツ)第69号 行政処分取消等請求事件)
(民集31巻4号533頁、判時855号24頁)


1999年5月26日(水) O 

〈事実の概要〉

 昭和40年1月14日、三重県津市の主催により、市体育館の起工式が神職主宰のもとで神式に則る地鎮祭として挙行され、市は神官への謝礼・供物代金等の費用7663円を公金より支出したが、同市市議会議員Sは、当該支出が憲法20条・89条に違反するとして、地方自治法242の2に基づき市長に対して損害補填を求めて出訴した(住民訴訟)。


〈判決の流れ〉

○第一審(津地方裁判所)
 本件起工式は、「宗教的行事」ではなく「習俗的行事」として、原告の請求を棄却。

○第二審(名古屋高等裁判所)
 神社神道は憲法20条にいう宗教であるが、本件地鎮祭が宗教的行為か習俗的行為かについては、@主宰者が宗教家であるか、A順序作法が宗教界で定められたものか、B一般人に違和感なく受容される程度に普遍性を有するものか、という三基準に照らし合わせれば、習俗的行為とはいえない。また、政教分離の目的は「信教の自由に対する保障を制度的に補強し確保する」こと、「国家と宗教との結合により国家を破壊し、宗教を堕落せしめる危険を防止する」ことにあり、国又は地方公共団体が行為主体となって特定の宗教活動を行えば、参加の強制如何を問わず分離原則に反する。
 以上、本件起工式は憲法20条3項に反する行為であり、公金支出は違法であるとした。
 これに対し、市長が上告した。

○上告審(最高裁判所大法廷)
 最高裁は、二審判決中の上告人敗訴部分を破棄自判し、原告の請求を棄却した(尚、5人の裁判官による反対意見と、1人の裁判官による追加反対意見が付された)。


〈判旨〉

1)「政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、(略)、間接的には信教の自由の保障を確保しようとするものである」が、国家と宗教との完全な分離は不可能に近く、かえって不合理な事態を生じる。それゆえ、「政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果に鑑み、そのかかわり合いが、右の諸条件(各々の国の社会的・文化的諸条件)に照らして相当とされる程度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。

2)憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは「およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いをもつすべての行為を指すものではなく、そのかかわり合いが右にいう相当の限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうべきものと解すべきである」。そして、その判断にあたっては、「当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか、その順序作法(式次第)が宗教の定める方式に則ったものであるかどうかなど、当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響など、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない」。

3)以上の見地から検討し、本件起工式は「宗教とのかかわり合いをもつものであることを否定しえないが、その目的は建築着工に際し土地の平安堅固、工事の無事安全を願い、社会の一般的慣習に従った儀式を行うという専ら世俗的なものと認められ、その効果は神道を援助、助長、促進し又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められないのであるから、憲法20条3項により禁止される宗教的活動にはあたらないと解するのが、相当である」。


〈論点〉

 @政教分離の程度(限界)と、A判断基準


*名古屋高裁判決、最高裁判決の相違点と、「目的・効果基準」について

 高裁も最高裁は、ともに、政教分離を制度的保障と解したが、結論が大きく異なっているが、高裁は政教分離を厳格に解しているのに対し、最高裁は、例えば私立学校援助金などの「『諸施策』を実施するにあたって宗教とのかかわり合いを生ずることを免れえない」とし、「国家と宗教の完全分離は不可能に近く、それはかえって不合理な事態を生ずる」として、政教分離原則を緩やかに解した点にある。
 その上で、政教分離に反するか否かの基準として、最高裁が示した「目的・効果基準」がある。前述したとおり、基準として@国の行為が世俗的であること、A国の行為の効果が特定の宗教を援助、助長又は抑圧するものでないこと、B国と宗教との間に過度のかかわり合いがないこと、の三基準があるが、本件判決において最高裁は、総合的に「目的・効果基準」を用い、以後の類似する判例にも踏襲されている。


〈私見〉

 そもそも政教分離は、過去の国家神道による他宗教(信者)に対する抑圧などから、思想の自由の外的表現である信教の自由を保障するための制度的保障であるから、政教分離は厳格に解するべきである。宗教団体設置の学校に対する助成金や文化財保護のための助成金等については、その性質から、政教分離を厳格に捉えても、不合理な事態に及ぶことはないと解する。「目的・効果基準」は、冒頭の名高裁基準Bについての検討に用いられるべきであり、その際「目的」と「効果」とを区別し、一方の基準でも満たさなければ、政教分離に反すると解する。


2004.7.18 upload / 7.22 update

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