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T95 『酒類販売の免許制』

最高裁平成4年12月15日第三小法廷判決
(昭和63年(行ツ)第56号酒類販売業免許拒否処分取消請求事件)
(民集46巻9号2829頁、判時1464号3頁)


平成10年10月21日 A 

<事実の概要>

 X(角田酒販株式会社、原告・被控訴人・上告人)は、酒類並びに原料酒糖の売買等を目的とする会社であるが、昭和49年7月30日に所轄税務署長Y(被告・控訴人・被上告人)に対して、酒税法9条1項の規定に基づき酒類販売業の免許(酒類販売免許)の申請を行った。しかし、Yは昭和51年11月24日付でXに対し同法10条10号の「その経営の基礎が薄弱であると認められる場合」に該当するとして同免許を与えない拒否処分を行った。これに対し、Xは、その拒否処分の取消を求めて行政訴訟を提起した。

 (第一審)東京地裁昭和54年4月12日判決
 原告に経営の基礎が薄弱であると認めるに足る事由はないとしてXの請求を認容。

 (第二審)東京高裁昭和62年11月26日判決
 酒類販売免許制の合憲性を肯定し、免許の拒否事由にも該当するとして一審判決を取り消した。Xは上告。


 (上告理由)
 酒類販売免許制は、職業選択の自由を保障する憲法22条1項に違反する。
  ・酒税保全のためには、納税義務者の製造業者だけを免許制にすればよい。
  ・免許制が採用された当時と現在とでは状況が異なっており、現在では必要ない。


<判旨>上告棄却

 @免許制が合憲か違憲かの判断基準について
 免許制(許可制)については、薬事法違憲事件(最判昭和50年4月30日)を、租税法の定立についてはサラリーマン税金訴訟(最判昭和60年3月27日)を引用した上で、「租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない。」とした。

 A免許制について
 「酒税は、本来、消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること、酒類の販売免許制度によって規制されるのが、そもそも、致酔性を有する嗜好品である性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることをも考慮すると、当時においてなお酒類販売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判断が、前記のような政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるとまでは断定しがたい。」

 B免許制度下における販売基準について
 「酒税法10条10号の免許基準・・・は、・・・酒類の販売免許制度を採用した前記のような立法目的からして合理的なものということができる。」


(薗部裁判官の補足意見)
 「財政目的を経済上の積極的な公益目的と同一視することにより、既存の酒類販売業者の権益の保護という機能をみだりに重視するような行政庁の裁量を容易に許す可能性があるとすれば、それは、酒類販売業の許可制を財政目的以外の目的のために利用するものに他ならず、酒税法の立法目的を明らかに逸脱し、ひいては、職業選択の自由の規制に関する適正な公益目的を欠き、かつ、最小限その必要性の原則にも反することとなり、憲法22条1項に照らし、違憲のそしりを免れないことになるものといわなければならない。」


(坂上裁判官の反対意見)
 「憲法22条1項の職業選択の自由を制約して酒類販売業の免許(許可)制を維持することが必要であるとも、合理的であるとも思われない。そして、職業選択の自由を尊重して酒類販売業の免許(許可)制を廃することが、酒類製造業者、酒類消費者のいずれに対しても、取引先選択の機会の拡大にみちを開くものであり、特に、意欲的な新規参入者が酒類販売に加わることによって、種類消費者が享受し得る利便、経済的利益は甚だ大きいものであろうことに思いを致すと、酒類販売業者を免許(許可)制にしていることの弊害は看過できないものであるといわねばならない。」


<判例>

 判例では、酒類販売免許制は合憲であるとしているものが多いが、その判断基準については違いが見られる。
 @酒類販売免許制は、積極的な目的を有するとして明白性の原則により検討したもの(東京地裁昭和59年7月19日判決、判時1129号47頁)

 A積極・消極両方の目的を有するとの立場から緩やかな規制措置の有効性について検討したもの(横浜地裁昭和63年3月9日判決、判タ672号139頁)


<学説>

 学説においては、違憲審査の判断基準が分かれている。
 @租税収入目的は、積極的な目的には含まれないので、必要最小限の原則によって判断するという見解

 A免許制は酒税を確保し、それを担保するため、販売業者の乱立を防止して酒類の需給の均衡を維持する目的であるから、積極的規制であるとして明白性の原則により判断するという見解


<私見>

 酒類販売業の免許制は、積極的規制とは考えられないので、違憲審査基準は、明白性の原則ではなく、必要最小限の原則により判断されるべきだと考える。
 判旨において、免許制の理由を酒税の確実な徴収とその税負担の消費者への円滑な転嫁を確保する必要からであるとしているが、酒税法では納税義務者は製造業者となっており、酒税の確実な徴収を目的として製造業者だけでなく、販売業者までも免許制にしているのは、必要最小限の原則に反していることとなり、違憲となる可能性が高いように思われる。



2004.7.16 upload / 8.4 update

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