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T92 社会経済政策としてなされる営業規制――小売市場事件

最高裁昭和47年11月22日大法廷判決
(昭和45年(あ)第23号小売商業調整特別措置法違反被告事件)
(刑集26巻9号586頁、判時687号23頁)


平成11年4月28日(水) U 

<事実の概要>

 被告人M会社は、市場経営等を業とする法人であり、被告人Oは、同社の代表者であるが、被告人Oは、被告人の会社業務に関し、大阪府知事の許可を受けないで、小売市場調整特別措置法所定の区域内において鉄骨モルタル塗平家建一棟(店舗数49)を建設し、小売市場とするために、小売商人47名に貸し付けた。そおでM会社及びOが起訴された。


<第1審>(昭和43年9月30日東大阪簡易裁判所)

 許可規制を合憲と判断し、被告人両名を罰金15万円に処した。<被告人控訴>


<第2審>(昭和44年11月28日大阪高等裁判所)

 第一審判決を支持。<被告人上告>


<上告理由>

 @右許可規制は、自由競争を基調とするわが国の経済体制に背反し、既存の小売市場経営者およびその小売業者を保護するため、新規開業者の締め出しを図ることのみを念頭におき、その利用者たる消費者ひいては一般国民の利益を無視し、既存業者の独占的利潤追求のみに奉仕するものであり、社会政策上何らかの規制が必要であるにしても、明かに必要な限度を逸脱し、およそ公共の福祉とは無縁の不当な規制であって、憲法22条1項に違反する。

 A本法3条1項が指定都市の小売市場のみを規制の対象とし、10店舗未満の小売市場およびスーパーマーケットを規制の対象としていないのは、いずれも合理的根拠を欠く差別的取扱いであるから、憲法14条に違反する。

 B小売市場の許可規制が憲法25条に違反する。


<上告審> 全員一致で上告棄却

 @憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なって、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当であり、国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るために、立法により、個人の経済活動に対して、一定の規制措置を講ずることは、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまるかぎり、憲法の禁ずるところではないと解すべきである。

 *個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限って、これを違憲とすることができる。

 *小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとった措置ということができ、その目的において、一応の合理性を認めることができないわけではなく、その規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない。

 A必要な限度で規制対象都市を限定したものであって、その判断が著しく合理性を欠くことが明白であるといえないから、・・・地域によって規制を受けるものと受けないものとの差異が生じても、そのことを理由として憲法14条に違反するものとすることはできない。

 B右許可規制のため国民の健康で文化的な最低限度の生活に具体的に特段の影響を及ぼしたという事実は、記録上認められないから、その前提を欠くとして不適法とした。


<論点>

 社会経済政策としてなされれる営業規制の違憲審査の基準


<違憲審査の基準>

             ┌――精神的自由権――→各種の厳格な基準
 二重の基準論――┤               ┌――消極的目的――→(厳格な)合理性の基準
             └――経済的自由権――┤
                 (合理性の基準)  └――積極的目的――→明白性の基準


二重の基準論:基本的人権を規制する立法の合憲性の判定にあたって、精神的自由と経済的自由とを区別し、前者に対する規制立法は、より厳格な基準によって審査されなくてはならないとする理論。

合理性の基準:立法目的及び立法目的達成手段の双方について、一般人を基準にして合理性が認められるかを審査するもの

消極目的規制:主として国民の生命及び健康に対する危険を防止もしくは除去ないし緩和するために課せられる規制

積極目的規制:福祉国家の理念に基づいて、経済の調和の取れた発展を確保し、特に社会的・経済的弱者を保護するためになされる規制

厳格な合理性の基準:人権の規制が重要な目的によるもので、かつその目的と手段との間に実質的関連性が認められる場合にかぎり合憲であるという理論

明白性の原則:人権制約立法が著しく不合理であることが明白でないかぎり合憲であるとする理論。


2004.7.15 upload / 8.11 update

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