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T47 『靖国神社公式参拝決議および玉串料等公金支出』

仙台高裁平成3年1月10日判決
(昭和62年(行コ)第4号・平成2年(行コ)第10号損害賠償代位請求訴訟事件、同附帯控訴事件)
(行集42巻1号1頁、判時1370号3頁)


平成10年10月21日 K 

<事実の概要>

(甲事件)
 岩手県議会は、天皇、内閣総理大臣等による靖国神社公式参拝の実現を首相、衆参両議長に要望する決議をした。また、同議会議長は議決事項を内容とする意見書、請願書、陳情書を作成して上京し、内閣総理大臣等に同書を提出した。
 これに対して、原告(岩手県住民ら)は、公式参拝が憲法20条1項後段、3項、89条に違反する行為であり、それを求める議決も憲法違反であると主張した。

(乙事件)
 岩手県は、靖国神社に対し昭和56年4月から10月にかけて、玉串料、献灯料の名目で21,000円を支出したところ、原告らは、本件支出は憲法20条1項後段、3項、89条に違反する行為であると主張した。


<第一審>(盛岡地裁昭和62年3月5日判決)

 内閣総理大臣等による靖国神社公式参拝が実現されるように要望する旨の議会の議決は、違憲無効とはいえないとした。
 また、玉串料の公金支出は、「戦没者慰霊のための社交的儀礼としてなされた贈与であり、宗教的行為には当たらない」とし、合憲と判断した。


<第二審>

(甲事件)
@ 本件議決の要望する公式参拝については、「その主観的意図が追悼の目的であっても、参拝の持つ宗教性を排除ないし希薄化する」ものとはいえない。

A 右公式参拝は、「行為の態様から見て、特定の宗教への関心を呼び起こす行為」であって、「国の非宗教性ないし宗教的中立性を没却するおそれが極めて大きい」。

B 「しかも、公的資格においてなされる右公式参拝がもたらす直接的、顕在的な影響及び将来予想される間接的潜在的な動向を総合考慮すれば、右公式参拝における国と宗教法人靖国神社との宗教上のかかわり合い、わが国の憲法の拠って立つ政教分離原則に照らし、相当とされる限度を超えるものと判断せざるをえない。」したがって、右公式参拝は、憲法20条3項に違反する行為である。 

(乙事件)
@ 「本件玉串料の支出は、その意図ないし目的が戦没者の追悼という世俗的な側面を有するとはいえ、玉串料の奉納は、・・・宗教性の濃厚なものであ」る。

A 玉串料の奉納の効果を考えると、「・・・特定の宗教団体への関心を呼び起こし、かつ、靖国神社の宗教活動を援助するものと認められるから、政教分離の原則から・・・」玉串料の支出は、「憲法20条3項の禁止する宗教活動に当たるものといわなければならない。」


<争点>

 1 公式参拝の合憲性
 2 玉串料の支出は憲法20条3項の禁止する宗教活動に当たるか


<判例>

@最高裁昭和52年7月13日判決(津地鎮祭事件)
 県が公金を支出して行った神式の地鎮祭は、その目的は世俗的で、効果も神道を援助、助長したり、他の宗教に圧迫干渉を加えるものではないから、宗教的行事とはいえず、政教分離原則に反しないとした。 

A大阪高裁平成4年7月30日判決
 公費を支出して行われた総理大臣の靖国神社公式参拝は、憲法20条3項、89条に違反する疑いがあるものの、最終的には、憲法違反とまでは判断しがたいとした。

B最高裁大法廷平成9年4月2日判決(愛媛玉串料訴訟) 民集51巻4号1673頁
 愛媛県靖国神社に対する玉串料、献燈料の名目での公金の支出は、その宗教的意義を持つことをまのがれず、その効果が特定の宗教への関心を呼び起こすものと認められ、・・・」憲法20条3項、89条に違反するとした。


<私見>

 かつては、神道を国教として扱っていたわが国において、戦没者に対する追悼を目的とする靖国神社の公式参拝や玉串料の公的資金の支出は、世俗目的であるといえる。
 しかし、その効果は、国家と靖国神社との深い関わり合いを持つことになり、政教分離の原則の根底をゆるがす事になるといえる。
 よって、日本国憲法に政教分離の規定を設け、国家と宗教の厳格な分離を求めているかぎり、戦没者に対する追悼を目的としても、現在は、宗教法人として存在する靖国神社への公式参拝や玉串料の公的資金の支出は、違憲であると考える。



2004.7.16 upload / 8.6 update

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