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22 『公立中学校における髪型の規制』

熊本地裁昭和60年11月13日判決
(昭和58年(行ウ)第三・四号 校則一部無効確認等請求、服装規定無効確認等請求事件)
(行集36巻11・12号1875頁、判時1174号48頁)


平成10年7月15日 F 

<事実の概要>

 隈本県下の町立玉東中学校が、昭和56年4月、男子生徒の髪形について「丸刈り、長髪禁止」とする校則を制定したところ、当中学校の一年次に入学した生徒X(原告)は丸刈りを望まず、在学中三年間普通の髪形を維持した。そして、Xはその間教師や在学生からいやがらせを受けたとして、学校長(被告Y1)に対して当該校則の無効確認、不利益処分の禁止等を求め、また、玉東町(被告Y2)に対して損害賠償を請求して出訴した。


<原告の請求理由>

@丸刈りを強制していない中学校との関係での住所地による差別、女子生徒との関係での性別による差別であり憲法14条違反
A法定手続に依らず髪型の切除を強制するもので憲法31条違反
B表現手段としての髪型の自由を侵害するもので憲法21条違反
C裁量権逸脱 


<判旨>

 @について、「校則は各中学校において独自に定められるべきもの」であり、「男子生徒と女子生徒で異なる規定をおいたとしても、合理的な差別であ」あること、
 Aについて、「本件校則に従わないからといって強制的に切除することは予定していなかった」こと、
 Bについて、「髪形が思想等の表現であるとは特殊な場合を除き、見ることはでき」ないこと、を理由に、それぞれ違憲でないと判示した。

 Cについて、「中学校長は、教育の実現のため、生徒を規律する校則を定める包括的な権能を有するが、・・・もっとも、・・・右権能は無制限のものではありえず、中学校における教育に関連し、かつその内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認される」。丸刈りは、今なお男子児童生徒の髪型の一つとして社会的に承認され、特異な髪型とはいえないこと、本件中学において創立以来の慣行であった丸刈りを昭和56年に校則という形で定めたこと、本件校則には、本件校則に従わない場合の処置については何ら定めもなく、違反した場合には、校則を守るよう繰り返し指導し、あくまで指導に応じない場合は懲戒処分として訓戒の処置をとるにとどまっていたことなどが認められ、「右に認定した丸刈りの社会的許容性や本件校則の運用に照らすと、丸刈りを定めた本件校則の内容が著しく不合理でと断定することはできないというべきである。」


<問題点>

 :「髪型の自由」は憲法上の保護を受けるのか。


<判例>

修得高校パーマ退学事件一審判決(東京地裁平成3年6月21日判決・判時1388号15頁)
 学校に無断で普通自動車の運転免許を取得し、その罰としての早朝登校期間中に同校の校則に違反してパーマを掛けたことなどを理由として、同校から自主退学するよう勧告され、同勧告に従い退学願を同校に提出した結果、同校の生徒の地位を失った事案。
 「髪型を自由に決定しうる権利は、個人が一定の重要な私的事項について、公権力から干渉されることなく、自ら決定することができる権利の一内容として憲法13条により保障されている」としつつも、私学教育の自由、原告が入学時に右校則を認識していた事実等を指摘して、パーマ禁止校則の効力を認めている。→平8最高裁


<学説>

多数は髪型の自由を憲法13条の保障する自己決定権の一つとしてとられている。

A)自己決定権を人格的生存に不可欠で、重要な「私的事柄について、公権力から干渉されることなく、自ら決定することができる権利」ととられる立場から、
 @髪型の自由は人によって重要であるが、人権であると肯定するは困難とする説(佐藤)
 A髪型の自由は自己決定権に含まれるとする説(芦部)

B)自己決定権を「個人の人格に関わる決定から単なる好奇心に基づく決定まで」をもふくむ広い自由と捉える立場から、
 B髪型の自由は自己決定権に含まれるとする説(戸波)  


<私見>

 裁判所の主観的な価値判断によって権利が創設されるおそれがあることを考慮すると、A)の立場を支持したい。その上で、髪型の自由を「身じまいを通じて自己の個性を実現させ、人格を形成する自由」であり、精神的成長期にある青少年にとって成人と同じくらい大切な自由と捉えられることから、Aが妥当であろう。
 さて、本件について、髪型規制は服装規制と異なり、当人を24時間規制すること、さらに本件の丸刈り規制は髪型の選択の自由自体を制約するものであることを考慮すると本判決に疑問を感じざるをえない。


2004.7.17 upload / 7.30 upadate

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