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U−113 『行政上の不利益処分と適正手続』―成田新法事件―

最高裁平成4年7月1日大法廷判決
(昭和61年(行ツ)第11号 工作物等使用禁止命令取消等請求事件)
(民集46巻5号437頁、判時1425号45頁)


平成12年11月22日   S 


【事実の概要】

 Y(運輸大臣)は、新国際空港(いわゆる成田空港)の供用開始を昭和53年3月30日とする旨の告知を行い、開港準備中のところ、Xらはこれに反対し、「横堀要塞」と称する団結小屋を設置し開港防止の過激な破壊活動を繰り返した。このため、Yは「新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(昭和53年法律第42号):「以下、成田新法)3条1項に基づき、同条3項に定める規制区域内所在の右工作物を「暴力主義的破壊活動等に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる爆発物、火炎瓶等の物の製造又は保管の場所の用」に供されるおそれがある(同1項2号)と認め、Xらに対し昭和54年以降毎年2月に右の用に供することを禁止する使用禁止命令を出した。
 これに対しXらは、昭和54年ないし同58年及び同60年に出された処分の取消しを請求するとともに国に対し国家賠償法に基づく慰謝料並びに損害金の支払を求めた。

 一審(千葉地判昭和59・2・3)、二審(東京高判昭和60・10・23)ともにXの請求を斥けたので、Xは上告。


【判旨】

 「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外であると判断することは相当ではない。
 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきであるものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものでないと解するのが相当である。」 


【学説】

・31条適用説
 行政手続にも適用されるが、円滑・迅速な行政運営の観点から、行政性質に応じた修正は許される。

・31条準用説
 適用説のような修正を認めると、それが刑事手続に跳ね返り、肝心の刑事手続における保障を弱めることになるので、準用するべき。

・13条説
 31条は刑事手続に関するものであり、行政手続の根拠は13条に求めるべきである。


【類似判例】

●川ア民商事件(最高裁昭和47年11月22日大法廷判決)
 「憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追求の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任つい有を目的でないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
 憲法38条1項の保障は、「純然たる刑事手続においてばかりでなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。」

●個人タクシー事件(最高裁昭和46年10月28日第一小法廷判決)
 道路運輸法「6条は抽象的な免許基準を定めているにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用すべく、とくに、右基準の内容がび用、高度の設定を要するようなものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要とされる事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならないというべきである。免許の申請人はこのような公正な手続によって免許の許否につき判定を受くべき法的利益を有するものと解すべく、これに反する審査手続によって免許の申請の却下処分がされたときは、右利益を侵害するものとして、右処分の違法事由となるというべきである。」

●第三者所有物没収事件(最高裁昭和37年11月28日大法廷判決)
 「第三者の所有物の没収は、被告人に対する附加刑として言い渡され、その刑事処分の効果が第三者に及ぶものであるから、所有物を没収させられる第三者についても、告知、弁解、防御の機会を与えることが必要であって、これなくして第三者の所有物を没収することは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科することに外ならない。」
 「関税法118条1項によって第三者の所有物を没収することは、憲法31条、29条に違反する。」


【私見】

 憲法31条の法定手続の保障を「直接的には刑事手続に関するもの」としているが、積極的に行政手続にも及ぶと解した方が妥当ではなかったかと考える。


2004.7.23 upload / 7.28 update

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